2008年07月22日
『煙の世界』 (岐阜県)
井川 浩司さんは、廃墟で江見 ゆかりの異様な行動を目撃して以来、毎日廃墟に通っていました。
彼は片思いの相手である江見さんを、あの奇行から救いたいと日々ここで彼女を待ち続けていたのです。
煙が出ていなくとも周囲に染みつく異臭に吐き気や頭痛を覚えながら彼女を待つ井川さん。
頭痛は酷くなり、目の奥が熱く痛み出しました。
目を押さえると、奇妙な光がまぶたの裏に見えます。
そして、ゆっくりと目を開いたとき、そこに広がっていたのは廃墟だったはずの美しい建物。
中には黄金色の煉瓦で出来た排煙口と、立ち上るピンク色の煙…。
井川さんは誘われるように、その魅惑的な煙を吸い込みました。
恍惚とした表情で煙を吸い続ける井川さんの目に、煙と共に上ってくる銀色の人影が見えます。
煙と共に宙を舞う人影の中には、死んだはずの父親も居ました。
父親に手招きされ、彼らの仲間に入ろうとする井川さんですが、地上を離れることが出来ません。
もがく井川さんの背後から声を掛けてきたのは、影野 稔さん。
影野さんは、井川さんが魂を預けてくれるなら、この煙が願いを叶えてくれると言います。
迷わず 「江見ゆかりの愛」 を願った井川さんは、影野さんに導かれるまま、歩き始めました。
火葬場の焼却炉の中へ。
【住民情報】
井川 浩司(いがわ こうじ) 15歳 男性 岐阜県/岐阜県 死亡
影野 稔(かげの みのる) 15歳 男性 岐阜県/岐阜県 生存
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Posted by 黴 at 23:24│Comments(0)
│四八(仮)