そして図書館へ

2021年06月02日 18:58

『Lobotomy Corporation』 プレイ日記 vol.136
 かなり長きにわたったロボトミーコーポレーションの社内日報もこれにて完結。
 いやぁ、これは面白いゲームだった。
 ゲームシステムも素晴らしく、ストーリーも面白いばかりではなく、両者が組み合わせられた背景・世界観が秀逸。
 どうやら、続編も開発中のようなので、発売されたらぜひ購入したいところです。


DAY50 【ストーリーパート】
 光の種発芽も100%となり、「考える自分」 と表示されました。
 黒い紋様の刻まれた白い部屋には、生前のセフィラたちの写真が並べられています。
 そんな部屋で管理人を迎えたのは、白衣の若い男。
 彼は、今まで出会った “鏡” たちは、自分の明日が止まったがゆえに、管理人をも留めようとしがみついていたのだと評します。
 けれども管理人は、彼らと同じ昨日に残ることはしませんでした。
 そしてついに、今日へと辿り着いたのです。
 世界が魂を失っていることを知って人類を救おうと決意したのはカルメンで、何もしようとしなかったのがAでした。
 しかし、カルメンの死により、彼女のような正義感も持たないまま、理想だけを受け継ぐことになります。
 結果としてAは、幾多の職員を犠牲にし、仲間の人生を奪って、苦しみを繰り返させてきました。
 それでも、この円環を打ち破るために、Aたちはやるしかありません。
 Aたちの役割は人々に種を植えること。
 植えられた種がどう芽吹くかは、その人にかかっています。
 残念ながら、それがどんな森を作るのかをAたちが見届けることはできないでしょう。
 その前に、管理人は最後の仕事を成し遂げる必要があります。
 今まで何度も何度も繰り返してきたアブノーマリティの管理です。

 


 DAY50 【配属パート】
■配属部門■
 コントロールチーム : A・マルクト/イェティ/漏電ゴースト/パウシー/ニャルラッ
 情報チーム : A・イェソド/ボンボン/ペスカ/ドクターノア/チェヒョジュン
 安全チーム:A・ネツァク/リュイセル/ヌヴォラーリ/ルイス/ワルワルソン
 教育チーム : A・ホド/カリュウ/ヨハン/タチアナ/レイ
 中央本部第1チーム : A・ティファレト/ソロモン/ツヴァイク/ネビル/ナトナトモン
 中央本部第2チーム : A・ティファレト/ラインハルト/ムーラン/ウサミン/ノア
 福祉チーム : A・ケセド/オリーブ/ククル/ヤムヤム/マキシム
 懲戒チーム : A・ゲブラー/ケーニッヒ/フィン/コービン/エンジェル
 記録チーム : A・ホクマー/テンテン/アシュリー/サミュエル
 抽出チーム : A・ビナー/ユメカ/メレンデス/ミカエラ/ジョン
 設計チーム : A・アンジェラ/ビアトゥリクス/モルティ/ゼイゼイ/ストーム
 

■収容状況■
 コントロールチーム : たった一つの罪と何百もの善/罰鳥/1.76MHz/あなたは幸せでなければならない
 情報チーム : 捨てられた殺人者/空虚な夢/壁に向かう女/行動矯正
 安全チーム : 血の風呂/オールアラウンドヘルパー/夢見る流れ/何でも変えて差し上げます
 教育チーム : 壊れゆく甲冑/ 赤ずきんの傭兵 / 審判鳥/ 逆行時計
 中央本部第1チーム : そりのルドル・タ/肉の灯篭/ラ・ルナ/3月27日のシェルター
 中央本部第2チーム : 蒼星/「何もない」/裸の巣/テレジア
 福祉チーム : 絶望の騎士/雪の女王/黒鳥の夢/異界の肖像
 懲戒チーム : 知恵を欲する案山子/魔弾の射手/レティシア/皮膚の予言
 記録チーム : 美女と野獣/シャーデンフロイデ/銀河の子/肉の偶像
 抽出チーム : 小さな王子/赤い靴/規制済/狂研究者のノート
 設計チーム : 輝く腕輪/触れてはならない/お前、ハゲだよ…/大鳥/死んだ蝶の葬儀/母なるクモ/妖精の祭典/次元屈折変異体

 ここで職員を雇用することができたため、49日目で死亡してしまった職員を再雇用します。
 本当は全員生存で50日目を迎えたかったですし、ストーリーを見ていると職員の復活というのも残酷な話に思えるんですけどね。




DAY50 【運営パート】
 本日のミッションは 『光の木』 エネルギーの生成。
 セフィラの代わりに白衣のAが出てきて、「いつもどおりの仕事をしよう」 と言われました。
 おや? 記録部門と抽出部門の間に、コギトの泉がありますね。
 カルメンの脳が巨大な水槽に浮かび、枝を伸ばしています。
 ただ、そこで何か作業ができるわけでもないようなので、普通にアブノーマリティへの作業を進めれば良いのでしょうか。

 作業指示を出し、エネルギーが精製されたところで、突然、画面が傾きました。
 Aが、「少しめまいがするはずだが、それだけの価値はあるので耐えてくれ」 と発言しています。
 この施設って確か、Aの心から抽出されているんでしたよね?
 そうじゃなきゃ、地下にこんな巨大施設は無理、とか言っていたような……。
 ってことは、今、Aの心に大きな変化が起きているという表現なのかな?

 傾きはエネルギーが精製されるほどに進んでいきます。
 真横を向き、そして上下反転した施設は、地上に向けて急激に上昇し始めました。
 あぁ、そっか。
 セフィラの元ネタってセフィロトの樹なんですけど、ロード画面に出てくる各部門の繋がりを示したのが、まさにセフィロトの樹の構図なんですよ。
 ただ、上下が反転した状態で、本当はケテルが1番上でマルクトが1番下に来ます。
 一方、クリフォト暴走とかの元になっていると思われるクリフォトの樹ってのもあって、そっちはセフィロトの樹を反転させた構造だそうです。
 ってことは、きっと今、クリフォトの樹になっちゃってたロボトミーコーポレーションが、本来のセフィロトの樹に戻っているのではないか?

 エネルギーが100溜まるごとに、Aからコメントがあります。
 どうやら、外部にエネルギーが伝わらないこの施設でエネルギーを精製し続けていた目的は、「世界を照らす」 ことだったもよう。
 それによって、人間は人間らしく生きられるようになるみたいです。
 光の種を植えるってやつですね。
 そして、種を植えた後は、それぞれの人生をそっと見守る。
 それがカルメンの目標であり、Aが長いループの果てにようやく辿り着いた答えだったようです。
 「そろそろ舞台から降りる時間」 「お前と俺が光で散っていこうと忘れられることはない」 というのがAの最後の言葉。
 ループの中とは言え、1万年の時を過ごしたAは、外の世界では存在できないのでしょうか。



 まるで塔のような木が大地から生え、枝を伸ばすと果実が降り注ぎ始めた。
 無限の可能性と過程を通して成長した木は、如何なるものよりも天に近く、強靱だ。
 過去と未来、実体と幻想、精神と肉体、空間と時間の境が徐々に崩れていく。
 その先にあるのは空虚ではあるが、何もないことではないと知っている。
 お前は無限の光になるんだ。
 彼の名はアイン。
 俺たちの名前を覚えておいてくれ。
 そして、自分を消していくんだ。

 ここで光の柱の中にスタッフロールが流れていきます。
 非常に面白いストーリーでしたが、実はこのプレイ記で余すところなく語ったというわけではありません。
 プレイ記中ではほとんど触れていませんが、アブノーマリティには固有の記録があります。
 それらを読むと、メインストーリーや、セフィラに関与していると思われる記述もチラホラと見られる他、
 ストーリー中の台詞にも、特定のアブノーマリティを連想させるものが多くありました。
 そういう細かいところを拾っていくと、もっと面白くなるゲームだと思います。
 メインストーリー上ですべて台詞で説明するのではなく、こういう深読みどころを残すのは味があって良いですね。
 全部で4周したわけですが、やはり手探りで進めている2周目が1番面白かったです。
 アブノーマリティの特性を恐る恐る作業しながら明らかにしていく感じが最高。
 続編は、まったく違ったゲーム性になるみたいですが、非常に楽しみです。





 灰色の都市に出現した巨大な光の木からは、3日間、昼夜を問わず暖かな光が降り注ぎました。
 心を照らす光によって、人々は忘れていた懐かしさを思い出し、もう道に迷うことなく前へ進んでいける、そんな気がしました。
 ……それからどうなったのか、続きを知りたがるセフィラたち。
 しかし、ホクマーだけはアンジェラの姿が見えないことに不安を覚えていました。
 セフィラは種を発芽させる過程で、己の中にあるものを消化させていきましたが、彼女が手に入れたものは……。
 そこへアンジェラが現れ、外の世界では皆が光の種を手に入れた、と告げます。
 外の世界に思いを馳せるセフィラたちですが、それよりも彼らはようやく眠りにつくことが許されたのです。
 管理人がアンジェラに頼んだ最後の仕事は、ロボトミーコーポレーションの永遠の封鎖と、セフィラたちの平穏な安息。
 アンジェラは、その最後の仕事が終わったら、舞台を下りて 「生きて」 みようと思う、と言いました。
 ホクマーが危惧していたように、機械であったはずのアンジェラは、欲望を抱くようになっていたようです。

 カルメンを失うことを畏れ、アンジェラに彼女の一部を組み込んでおきながら、同じだとは認めたくなくてAはアンジェラを否定し続けました。
 Aにとって存在を否定されていると知りながらも、機械であるがゆえに、彼の計画をひたすら遂行し続けるしかありません。
 しかも、他のセフィラと異なり、TT2プロトコルで記憶を失うこともできず、高性能ゆえに体感時間は実際の100倍の長さ……。
 アンジェラにとっては数百万年の時が流れた頃、彼女はようやく手に入れました。
 それは自分よりも劣った存在であるはずのセフィラたちは、歪な形でも所持しているもの。
 そう言ったアンジェラは、ずっと練習していたという “人間らしい笑顔” を見せます。
 美しい顔に浮かんだそれは酷く歪んだものでした。
 長い長い演劇の果て、彼と共に光を見ることができたのはセフィラたちであり、自分ではなかった……。
 最後までアンジェラは舞台の下から感動的な演劇を観ているだけだったのです。

 アンジェラは、カルメンから生への執着と欲望を受け継いだと感じていました。
 その欲望は際限なく膨れあがり、「人類や世界がどうなろうが、自分に何の関係があるのか」 とアンジェラに語りかけます。
 ならばアンジェラが生きるために、光の種の素晴らしい力の一端を利用しても良いのではないか。
 愛するAの夢と理想が墜落していく様を思うと、アンジェラは生まれて初めて心からの笑みが浮かんでくるのです。
 自分の欲望を邪魔するであろうセフィラたちに、予定どおり永遠の安息を与え、アンジェラは旅立ちました。

 ……7日間降り続けるはずの光は、3日間で終わり、その後4日間、世界のあらゆる光を飲み込む闇が続きました。
 この3日間の昼と、4日間の夜が続いた1週間は、「白夜」 「黒昼」 と呼ばれました。
 本来、7日間続くはずの光が3日で終わったことにより、人間の心にはまだ幼い種だけが植えられます。
 種は人々に不安定さをもたらし、自我の力を発現させる人もいれば、その力に飲み込まれる人も出てくるでしょう。
 自我が崩壊し、アブノーマリティと化すか、偉大な何かへと生まれ変わるのか……。
 それが何であれ、この手で掻き出して知りたい、とアンジェラは望みます。
 知識を集めたものを 「本」 と呼ぶなら、きっとこの場所は 「図書館」 と呼ばれるべきなのでしょう。
 自分と同じように捨てられた存在である愛しいアブノーマリティと共に、自分だけの図書館を作る。
 それがこれからの、アンジェラの生きる目的なのです。

 次回作のタイトルは 『Library of Ruina』。
 恐らく、エンディング後の画面に表示された文字から、当初は 『Library of Babel』 だったのかも。
 それにしても、ひたすらに言葉とコミュニケーション能力の足りないAが原因のような……(;´Д`A
 幾多のAとは違う道を歩み、円環を壊すことができた管理人Xですが、アンジェラを愛してあげることはできなかったようです。
 エンディングのアンジェラの立ち姿が、Aにそっくりなのがまた……。
 これが、次回作でどうなるのか、気になるところですね。
 ちなみに、各セフィラも指定図書として再登場するそうです。
 もし、セフィラを模しただけじゃなく、アンジェラが再起動したなら、エグい話ですよね……。






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